これはわたしが19歳の時
劇団で芝居をやっていた時の話です。
今でも鮮明に覚えていることがあります。
それは、劇団の2年先輩のMさんのことです。
そのM先輩は、
ルックスもよく運動神経抜群でした。
しかし、演出家の先生に、
芝居の稽古中に
「お前には音痴だし、芝居の才能もない!
早く見切りをつけたほうがいい」
とよく言われていました。
舞台の公演が終わり
翌日の反省会でのことです。
そこでも、M先輩は演出家に
説得されるかのように言われていました。
「ずっと見てきたが、お前に芝居は向いていない。
やめたほうがいい・・・」
するとその時、なんと
M先輩は、演出家に向かって頭を下げ
こう言ったのです。
「お願いです。やめたくありません。
続けさせてください。お願いします。」
大変衝撃的なシーンでした。
その日の帰り道、他の先輩に聞きました。
M先輩はなんであそこまで言われても
続けさせてくださいと言うんですかね?
すると先輩が一言、
「芝居が好きなんだよ。
彼にとって、芝居は人生そのものなんだよ。」
がーん!!!!
僕は思いっきり頭を何かで殴られたような
衝撃が走りました。
まだ19才、フワフワとしていた自分には、
プライドも何もかもかなぐり捨て
そこまでしても好きなものに真っ直ぐに向き合う先輩の姿に
今までに感じたことのないショックを受けたのです。
(人生そのものなんだ・・・)
この経験は今の私の中に強く根付いています。
もちろんM先輩は芝居を続けていき
役者として成功しました。
才能がないと言われ続けながらも成し遂げた彼に、
才能よりも、やってやる、やりたい、と思う意志の力が大切なのだ、と
力強く教わったと思います。
期間限定で
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